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大前提として、同社内では、そもそも居酒屋という業態の将来性が厳しく、休業によって雇用が守れなくなるという危機感があるという。実際、同社における21年3月期第1四半期(20年4月~6月)の売上高は前年比で4割も減少し、最終損益は45億5000万円の赤字であった。この結果を受け、「アフターコロナにおいても、居酒屋市場は現状の7割に縮小する」という予測の下、FC展開や生産性向上などさまざまな手を打っている。その一つが業態転換だ。 焼肉業態として、同社は和牛の食べ放題がウリの「かみむら牧場」をすでに展開しているが、居酒屋業態から転換した焼肉の和民も20年10月から順次オープンしている。日本フードサービス協会によると、パブレストラン・居酒屋業態の20年10月売り上げは前年比63. 7%と不調なところ、焼き肉の和民1号店となる大鳥居駅前店では、19年と20年の10~11月を比較すると283%を記録しているといい、好調な様子がみてとれる。 好業績を受けてアルバイト採用も増加しており、ワタミ側に確認したところ、既に業態転換を果たした12店舗だけをみても、転換前のアルバイト人数合計は「291人」から「433人」へと約150%の増加となっている模様だ。また、業態転換や店舗再編によって閉店する店舗に勤めているアルバイトスタッフに対しては、原則として近隣他店舗を紹介し、そこで働いてもらうことになっている。 すなわちワタミは、緊急事態宣言による居酒屋の休業によって雇用が守れなくなる恐れがあったところ、素早い業態転換によって人員を受け入れられるようにし、非正規切りをしているとは言い切れない。 ロボット導入による効率化で「非正規切り」が現実となるのか? 和民の焼肉や、かみむら牧場では「非接触型飲食店」を目指し、料理配膳ロボットを導入、配膳や下げ膳を自動化している。また肉や料理は、一部の回転寿司店などで実用化されている"特急レーン"に乗って運ばれるなど、従来型の居酒屋業態に比べて対人接触を約80%減らす「非接触接客」を実現。ホール業務の効率化と同時にウイルス感染防止につなげている。 元記事ではその自動化でホールの人員が半減し、雇用削減につながると指摘しているが、事実とは異なるようだ。確かに配膳ロボット導入によって「ホール人員」は削減されたが、焼肉業態は食べ放題中心であるため、皿数は居酒屋時代よりも圧倒的に多くなり、「厨房人員」のニーズが増えたのだ。先述したアルバイト数の増加も、厨房へシフトした人員ニーズのためのものだったのである。ちなみに、アルバイト数増加によって人件費も増大しているが、それさえも売上増によってカバーできているのだという。 配膳ロボット導入は人件費削減が目的ではなく、「非接触化の推進により、顧客にもスタッフにも安心を与える」ことが目的だったといえる。 ワタミは国の政策を活用せず、「非正規差別」をしているのか?